風船の結び玉3」別紙(超近代文学論集)



近代文学論
----若き詩人、かく詠えり----



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ポルノグラフィティ





「ポルノグラフィティ」とは、アキヒト、ハルイチ、シラタマ(tama)による、
3人組のバンドグループである。

グループ名を直訳すると「エロ写真」。

だがバカにしてはいけない。
彼らの歌詞の詩的で美しい表現、
そして澄んだ目から見た若者らしい主張はかなりの定評があり、
世代を超えて愛されているミュージシャンなのだ。

あの吉田拓朗が大絶賛していたくらいだから、
きっともうすぐ神様レベルになるでしょう。


さて、
ポルノの名をいっぺんに世間に知らしめたデビュー曲、『アポロ』。
この歌の歌詞を、以下に載せておこう。
あなたには、ハルイチが伝えたかったメッセージが読み取れただろうか?

アポロ

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ったっていうのに

みんながチェック入れてる限定の君の腕時計はデジタル仕様
それって僕のよりはやく進むって本当かい?ただ壊れてる

空を覆う巨大な広告塔には
美人が意味ありげなビショウ
赤い赤い口紅でさぁ・・・

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から
変わらない愛のかたち探してる

大統領の名前なんてさ覚えてなくてもねいいけれど
せめて自分の信じてた夢くらいはどうにか覚えていて

地下を巡る情報に振りまわされるのは
ビジョンが曖昧なんデショウ
頭ん中バグっちゃってさぁ・・・

僕らの生まれてくるもっともっと前にはもう
アポロ計画はスタートしていたんだろ?
本気で月に行こうって考えたんだろうね
なんだか愛の理想みたいだね

このままのスピードで世界がまわったら
アポロ100号はどこまで行けるんだろ?
離ればなれになった悲しい恋人たちの
ラヴ・E・メール・フロム・ビーナスなんて素敵ね

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から
変わらない愛のかたち探してる



いかがだろうか。
なかなか迫力のある詩である。
この歌を要約すると

時代は進んでいる。人類はとうの昔に月に行き、情報は入り乱れる
。だが幾多の時代を経ても愛の形は変わらない。夢を忘れる必要も
ない。人間の本質はそこにあるんだ。

といったところだろうか。
つまり「時代に流されるな」ということですね。
技術は進歩し、街は移りゆくけれど、
愛とか夢のかたちはしっかりがっしりと存在する。
そちらを大事にすべし、と言っているのです。たぶん。

この「時代に流されるな」というのは、
実はポルノの歌の中ではよくあるテーマなのだが、それは後述。

さて、次に注目すべき箇所は3行目と4行目である。
この部分が作詞者のメッセージの"にこごり"なわけだが、
いかんせん、陰喩が使われている。
ぼんやり歌を聴いているだけでは意味が読み取れないだろう。

みんながチェック入れてる限定の君の腕時計はデジタル仕様
それって僕のよりはやく進むって本当かい?ただ壊れてる

まずここに、2つの時計が出てくる。
ひとつは、みんなが欲しい欲しいと言っている"デジタル時計"。
もうひとつは、"僕の"時計。きっとアナログ時計であろう。
この、デジタル、アナログ、というのは、それぞれ
「時代の最先端」と「昔からあり、ずっと無くならない本質的なもの」の象徴である。
そして時計というのは時間の流れを観測するための道具であるわけだから、
「デジタル時計ははやく進む」と言い張っている"君"は、
時代の先っぽに立ち、セカセカセカセカ、
何だか無駄に焦っている人間を意味している。
ただ流行に乗っかることに、精いっぱいな・・・。
一方、本質的なものを観測するための道具を持っている"僕"は、そんな"君"に対して
「その時計、はやく進むって本当かい?」と少し皮肉めいたことを言う。
"君の時計"が期間限定というのもまた、皮肉っぽいですね。

そしてここが一番ポルノらしいのだが、
そんな"君の時計"は、『壊れてる』と言い切ってしまっている!
若さですね。
"僕"は自分の生き方に自信があるのでしょう。

もし私がこの部分を書くとしたら、
「どちらの時計も正しいんだよ」
みたいに結ぶだろうな、と考えたら、
私も若くないな、と落ち込まざるを得ないのであります。

とにかくだ、
私の言いたいポルノのすばらしいところというのは、
若さゆえの、直線的な主張に伴った
切捨て系の否定のいさぎよさであり、
更に言わせてもらえれば、
その否定の対象に「若者文化」自体が含まれることだ。
そう、「時代に流されるな」これがポルノの主たるテーマなのである。

『ヒトリノ夜』という歌に、次のような詩がある。

「恋セヨ」と責めるこの街の基本構造は・・・

・・・現代というのは、恋をしなければいけない時代なんだ。
みんなと同じじゃないと落ち着かない若者。
まわりみんなが恋をする
なのでとにかく恋をする。
君は無理をしている。
それは本物の恋なのか?

だからロンリ・ロンリー君だけはオリジナルラブを貫いて


今どきの歌手が、今どきの若者の生き方に迎合することこそあれ、
若者文化を否定することがあっただろうか?
彼らは自分というものを持っている。
だから詩に力がある。
詩というのは、人間を映しているだけだからね。





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